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横田英史の読書コーナー

「炎上」と「拡散」の考現学~なぜネット空間で情報は変容するのか~

小峯隆生、筑波大学ネットコミュニティ研究グループ、祥伝社

2015.9.16  10:16 am

 雑誌編集者と筑波大学のネットコミュニティ研究グループがネット(SNS)上で炎上したケースとヒットしたケースを計六つ選び、その過程を解析・分析した書。SNSユーザーの評価を定量化した結果、ネットでの評価は、上がり続けるパターン、下がり続けるパターン、上がってから下がるパターン、下がってから上がるパターンの四つに分類できるという。炎上とヒットのメカニズムを詳細に調べており読み応えがある。同時にネットの怖さも改めて感じられる。
 例えば、一貫して上昇曲線を描くヒットのケースとして取り上げるのは映画「タイタニック」の地上波放送。何となく分かりやすい。逆に一貫して下降曲線を描く炎上パターンとしては、コンビニの冷凍ケースに入った写真をTwitterにアップした「アイスマン」事件と、経済産業省のエリート官僚がブログで不適切な発言を繰り返した事件を取り上げる。筆者は、ヒットと炎上のプロセスをコメントを丹念に追うことで明らかにする。特に後者の炎上のプロセスは詳細である。
 このほか、上昇して下降するケースとしてクラウドファンディングで学生を支援しようとした「スタディギフト」事件とスマホアプリの「アップログ」事件を、炎上の消火成功したケースとして「サイバーエージェント藤田社長の日経電子版ブログ」事件を取り上げる。
 最終的に筆者は炎上を左右する三つのポイントを発見する。第1はお金、第2は性欲、第3は社会正義である。

書籍情報

「炎上」と「拡散」の考現学~なぜネット空間で情報は変容するのか~

小峯隆生、筑波大学ネットコミュニティ研究グループ、祥伝社、p.192、¥1620

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。