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横田英史の読書コーナー

《推薦!》チャップリンとヒトラー~メディアとイメージの世界大戦~

大野裕之、岩波書店

2015.8.24  10:37 am

 1989年4月に4日違いで生まれたチャップリンとヒトラー。ちょび髭が特徴の二人は、ともにメディアを駆使して頭角を現した。本書は、チャップリンの人生と映画「独裁者」の製作秘話を軸に、二人の歩んだ人生を歴史的背景を交えながら辿っている。チャップリンに対する筆者の思い入れは強く、牽強付会な議論も散見されるが、それもある意味で愛嬌になっている。肩のこらないエンタテインメントに仕上がっており、お薦めの1冊である。
 チャップリン家に保管されていた数々の資料・記録に基づいた「独裁者」製作の裏話は実に興味深い。場面の一つひとつに込めたチャップリンの思いと思惑が伝わってくる。特にラストの演説シーンが出来上がる過程は、本書のクライマックスでもある。本書を読まれた多くの方は、きっと「独裁者」を見たくなるだろう。それにしても、ナチスのチャップリン攻撃がこれほど苛烈だったとは知らなかった。新聞や雑誌、外交ルートを使ったキャンペーンによって、英米政府やハリウッドの映画業界から製作中止を求める声があがっていたという。

書籍情報

チャップリンとヒトラー~メディアとイメージの世界大戦~

大野裕之、岩波書店、p.304、¥2376

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。