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横田英史の読書コーナー

騙されてたまるか~調査報道の裏側~

清水潔、新潮新書

2015.8.12  10:49 am

 「桶川ストーカー殺人事件」を追い警察よりも先に犯人を突き止めたFOCUSカメラマンとして知られる著者(現在はテレビ局記者)の手による取材論。マスメディアにはびこる“似非”取材を厳しく批判している。現場感をうまく伝えており、同業の評者から見てもいちいち納得の内容である。マスメディアの在り方に興味をもつ方にお薦めの1冊である。
 本書は、著者の取材活動の実際とマスメディア批判を織り交ぜて構成されている。冒頭では、日本で殺人事件を起こしたにもかかわらず本国に逃げ帰った3人のブラジル人を追い、取材にこぎつけたプロセスを詳細に紹介する。桶川ストーカー殺人事件のほか、冤罪の可能性をいちはやく指摘した足利事件、一方的な報道が真実を覆い隠した群馬パソコンデータ消失事件、虚言癖の人物にマスメディアが振り回された“ニセ三億円事件犯”への取材など、裏を取ることや足を使った取材の大切さが本書を読むとよく分かる。

書籍情報

騙されてたまるか~調査報道の裏側~

清水潔、新潮新書、p.256、¥842

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。