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横田英史の読書コーナー

反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体

森本あんり、新潮選書

2015.5.9  9:44 am

 米国人が見せる独特な行動パターンの奥底に何があるのかを解き明かした書。米国にはキリスト教を背景として生まれた「反知性主義」が存在するという。著者は米国とキリスト教の歴史を踏まえ、反知性主義がどのような土壌で生まれ、どんな主義主張から構成され、誰が担い手になり、なぜ広がりを見せたのかについて、映画の話を交え分かりやすく解説する。机上の空論ではなく具体的な事例を示しているのが理解を助けてくれる。同時に、著者は現在の米国社会を読み解くヒントを与える。知的好奇心を満足させてくれる良書で、多くの方にお薦めである。
 反知性主義は、知性が世襲的な特権階級だけの独占的な所有物になることへの反感によって成り立っているという。知性が知らぬ間に越権行為を働いていないか、自分の権威を不当に拡大使用していないか、そのことを敏感にチェックするのが反知性主義というのが著者の見立てだ。つまり反知性主義とは、例えばハーバード大やイェール大、プリンストン大への反感ではなく、「ハーバード主義、イェール主義、プリンストン主義」など、出身者が固定的に国家などの権力を左右する立場にあり続けることへの反感を指している。
 筆者が米国人に特有の性癖として挙げるのは、明瞭に善悪を分ける道徳主義、尊大な使命意識、揺らぐことのない正当性の自認、実験と体験を旨とする行動主義、世俗的であからさまな実利志向である。テレビにおける伝道番組の多さ、リーダーに親しみやすさを求める風潮も、反知性主義の影響によるものである。これらの背景には神の前におけるラディカルな平等主義があると、キリスト教の歴史を踏まえながら述べる。

書籍情報

反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体

森本あんり、新潮選書、p.282ページ、¥1404

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。