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横田英史の読書コーナー

(世界のなかの日本経済:不確実性を超えて)人材の国際移動とイノベーション

村上由紀子、エヌティティ出版

2015.3.27  4:03 pm

 イノベーションを誘発するには国際的な人材交流が不可欠であることを、データにもとづき明らかにした書。人材の国際移動・交流がどのようにイノベーションにつながっていくのかを理論的・実証的に分析・検証している。人材の国際移動について多面的な分析を試みており得るところが多い。イノベーションについて興味のある方にお薦めの1冊である。

 筆者は、企業が外国人を雇用したり、海外留学や海外での就業経験をもつ人材を雇うと、組織に多様性のある環境が作られ、暗黙知の移転に効果をあげると指摘する。これによって知識創造力が高まりイノベーションにつながる。同時に筆者は、人材の国際移動が引き起こすネガティブな面も取り上げ、克服するための施策にも言及する。

 評者が興味深く読んだのは日本と諸外国との比較。とりわけ高度人材の受け入れにおける日本と米国の差である。米国は世界全体の42.7%、高度人材の45.9%と圧倒的に多くの移住者を受け入れている。頭では分かっていたが数字で示されると、米国の懐の深さに改めて驚かされる。中国の躍進についての指摘も面白い。

書籍情報

(世界のなかの日本経済:不確実性を超えて)人材の国際移動とイノベーション

村上由紀子、エヌティティ出版、p.253、¥2700

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。