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横田英史の読書コーナー

(現代社会学ライブラリー 15)子育てと仕事の社会学~女性の働きかたは変わったか~

西村純子、弘文堂

2015.3.17  11:43 am

 働く女性の結婚・出産・子育ての現状を定量的に分析した書。戦後から現在にいたる女性の働き方の移り変わりとその理由を明らかにしている。一般に「若い世代ほど、結婚にかかわらず働くようになった」といわれることが多い。しかし著者はデータに基いて、「結婚後も正規雇用就業を継続する女性が増えた」「女性が働きやすくなった」と安易に解釈してはならないと警告する。データ分析を駆使した展開は説得力がある。「子育ても仕事も」が可能な社会や会社の実現を考えるうえで大いに役立つ書である。

 出産後の女性のキャリア形成において学歴はほとんど機能していないなど、意外性のある指摘が多い。例えば第1子出産の2年前から出産年にかけて就業できるかどうかを左右するのは、官公庁勤務であることと正規雇用就業していることである。非常に限定的な職場や雇用形態にある人しか、就業を継続できないのだ。しかも出産年になると非就業者が70%にのぼる。つまり第1子出産1年後に働いているのは、出産までの間に継続就業できる条件に、たまたま恵まれた数少ない女性であり、大多数の女性が出産年までに就業継続を断念しているという現状を本書は白日のもとに晒す。筆者は勝手な思い込みを打ち砕く。

 「働き続けられる職場」「働き続けられる仕事」に就けた人のみが就業できるという構図は出産後も変わらない。第1子出産を経ても就業できる、あるいは出産した後10年にわたって働き続けられるのは、専門・技術職や教員という職業、あるいは官公庁という職場、そして正規雇用という、非常に限られた職種や職場、働き方に限定される。

書籍情報

(現代社会学ライブラリー 15)子育てと仕事の社会学~女性の働きかたは変わったか~

西村純子、弘文堂、p.170、¥1404

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。