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横田英史の読書コーナー

サイコパス・インサイド~ある神経科学者の脳の謎への旅~

ジェームス・ファロン、影山任佐・翻、 金剛出版

2015.2.27  10:27 am

 サイコパス(精神病質)とは何といえば、映画「羊たちの沈黙」「ハンニバル」のハンニバル・レクターを思い出す方が多いのではないか。共感性を欠き、饒舌で人を巧妙に操る。しかも倒錯的な行動に対する良心の呵責は完全に欠落している。そんなイメージが浮かぶ。カリフォルニア大学アーバイン校医学部教授で神経科学者である著者が、サイコパスを脳科学、遺伝子学、生育環境などの観点から探る。サイコパスや犯罪学に興味をお持ちの方にお薦めの1冊である。
 サイコパスをもつ連続殺人者の脳をスキャンすると、前頭葉と側頭葉の一部に機能低下を示す共通のパターンが認められるという。ところが研究を進めていくなかで、著者は同じパターンを自らのスキャン画像に発見する。家系を遡れば、サイコパスの先祖も存在する。では、何が足りずに殺人者になるのを免れたのか。筆者はサイコパスを成立させる3要因にたどりつく。一つは前頭葉と側頭葉、扁桃体の異常なほどの機能低下である。二つ目はいくつかの遺伝子にハイリスクな変異体が存在すること。最後が、幼少期早期に精神的、身体的あるいは性的な虐待を受けたことだという。
 本書の一部に学術的なところもあるが、気にせず読み進んでも問題ない。残念なのは翻訳がイマイチなところと校正が甘いところ。翻訳調の文章は読みやすいとは言いづらいし、今どき珍しいほど誤字が多い。

書籍情報

サイコパス・インサイド~ある神経科学者の脳の謎への旅~

ジェームス・ファロン、影山任佐・翻、 金剛出版、p.260、¥3024

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。