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横田英史の読書コーナー

綻びゆくアメリカ~歴史の転換点に生きる人々の物語~

ジョージ・パッカー、須川綾子・訳、NHK出版

2015.2.24  10:26 am

 市井の4人に焦点を当て、1978年から2012年にかけて米国の社会と生活がどのように変化していったかをドキュメンタリー・タッチで描いたノンフィクション。個人の人生を詳述することで、社会の動きを十把一絡げで抽出するのでは分からない生活者の息遣いを伝えている。市井の4人のほか、政治家のニュート・ギングリッチ、テレビ司会者のオプラ・ウィンフリー、ウォルマート創業者のサム・ウォルトンやラッパーのジェイ・Zといった有名人のエピソード、フロリダ第3の都市タンパの盛衰を効果的に挿入する。700ページ弱の大著で持ち運びは大変だが、最初から最後まで飽きずに読み通せる。米国ジャーナリズムの懐の深さとスケールの大きさを感じさせてくれ、読み通すだけの価値がある。優れた社会論であり、米国の変化に興味のある方にお薦めしたい。
 取り上げる市井の4人は、バイオ燃料で町おこしを目指す南部の起業家、議員スタッフやロビイストとして四半世紀をワシントンで過ごした政界インサイダー、工場労働者からコミュニティ・オーガナイザーに転じたシングルマザー、自由至上主義(リバタリアニズム)を追求するシリコンバレーのベンチャー・キャピタリストである。彼らが1978年、1984年、1987年、1994年、1999年、2003年、2008年、2010年、2012年にどのように過ごしたかを記述する。本書を読むと米国の抱える問題が市民の目線から理解できる。貧富の差の拡大、過酷な雇用形態、ドラッグ、暴力、殺人、リーマン・ショック、同時多発テロなど、本書がカバーする範囲は広い。

書籍情報

綻びゆくアメリカ~歴史の転換点に生きる人々の物語~

ジョージ・パッカー、須川綾子・訳、NHK出版、p.696、¥3780

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。