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横田英史の読書コーナー

昭和の名編集長物語~戦後出版史を彩った人たち~

塩澤実信、展望社

2015.2.11  10:29 am

 戦後の雑誌文化を担った名編集長42人を取り上げ、それぞれに数ページの解説を加えた書。一般向けとは言えないが、100万部超の時代もあった週刊朝日、600万部超の金字塔を打ち立てた少年ジャンプ、大橋歩の表紙が印象に残る平凡パンチ、田中金脈を暴いた文藝春秋、タブーに挑戦し続けた噂の真相など、雑誌の逸話がどんどん出てくる。雑誌以外にも、「試験に出る英単語」や俵万智の「サラダ記念日」なども登場する。いずれ劣らぬキャラが立った編集長たちだけに、一人あたり10ページ足らず紙幅では物足りなさが残るのも事実である。
 印象的な話が多い本書だが、暮しの手帖の花森安治の感性と先見性はすごい。口絵がモノクロの時代。あるとき花森は真紅の布地にこだわった。その布地を使って座布団を作り、紺のかすりの座布団を並べて写真を撮った。当然、写真はモノクロである。こだわりの理由は、「これから先はカラー時代になる。雑誌にも色が使えるときがくる。編集する者が色の感覚がなかったらどうする。そうなってからでは、間に合うものではない」と。このほか「サラダ記念日」の逸話もなかなかいい。
 本書は1986年に出版され、1996年に20人の編集長を追加したもの。この20年ほどの話は登場しない。取り上げるに足る志と逸話をもった雑誌が存在しないと判断されたのだとしたら少々寂しい。

書籍情報

昭和の名編集長物語~戦後出版史を彩った人たち~

塩澤実信、展望社、p.308ページ、¥2052

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。