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横田英史の読書コーナー

米中経済と世界変動(シリーズ現代経済の展望)

大森拓磨、岩波書店

2014.11.11  12:41 pm

 経済活動における米国と中国のせめぎあいの歴史を追った書。米中の関係が現在の状態に形成されていった過程を、政治動向を踏まえて論じている。米国の圧力に中国が屈した時代から、対等関係を模索する時代へと変化していったプロセスを明らかにする。GDPで世界2位になった中国の振る舞いを考えると、「そんな時代もあったなぁ」と妙に感慨深い。思ったよりも気づきが多い内容で役立ち感がある。中国に関心がある方にお薦めしたい。

 本書は、米中の経済関係がどのように形成され、どのような性格を持ち、リーマンショックを機にどう変わり、これからの世界経済をどのように動かすのかを展望する。ロシア(ソ連)のアフガニスタン侵攻、米中の国交樹立、冷戦の終結、天安門事件などを、米中の経済関係の視点から丹念に探る。さらに21世紀に入ってからリーマンショックにいたるまでの米中経済関係の進展を貿易、通貨・金融、経済摩擦の観点から論じる。ちなみに今後の米中経済関係のキーワードとして挙げるのが、環太平洋圏を舞台に地域経済圏を構築し、管理しようとする「ネオブロック化」である。

 米中関係のターニングポイントはリーマンショックだ。米国の能動性、中国の受動性という形勢が逆転した、政界経済の基軸を担う米国経済がリーマンショックで怯むなか、中国の存在感の高まった。米国の「中国頼み」の様相が、貿易面で強くなった。

書籍情報

米中経済と世界変動(シリーズ現代経済の展望)

大森拓磨、岩波書店、p.264、¥2700

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。