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横田英史の読書コーナー

石の虚塔~発見と捏造、考古学に憑かれた男たち~

上原善広、新潮社

2014.11.8  10:12 am

 考古学のロマンだけではなく、学閥間の争いや旧石器を巡る学術論争、発掘の捏造、アマチュア研究者と象牙の塔の住人との確執など、日本の考古学について色々と考えさせられる書である。本書は大きく三人に焦点を当てる。「岩宿遺跡の発掘」で知られるアマチュア考古学者・相澤忠洋、「旧石器の神様」と呼ばれ相澤を支えた芹沢長介、旧石器発掘捏造の「神の手」藤村新一である。本書はこの3人を軸に、日本の考古学会の裏側に迫ったノンフィクションであり読み応え十分だ。

 冒頭は、毎日新聞のスクープで捏造をあばかれ、表舞台から姿を消した藤村の今を紹介する。ノンフィクションの冒頭として秀抜で、本書への期待は否が応でも高まる。次から次へと旧石器を発掘し教科書の記述さえ塗り替えた藤村だが、その藤村が憧れたのが相澤であり、藤村の不自然な発掘を権威づけ騙され続けたのが芹沢だった。筆者は相澤と芹沢、芹沢の師だが最後は鋭く対立した杉原荘介といった人物を描くことで、日本の考古学会の抱える問題点を明らかにしている。

書籍情報

石の虚塔~発見と捏造、考古学に憑かれた男たち~

上原善広、新潮社、p.287、¥1620

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。