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横田英史の読書コーナー

How Google Works~私たちの働き方とマネジメント~

エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ著、土方奈美・訳、日本経済新聞出版社

2014.10.30  12:08 pm

 米 Google 幹部のエリック・シュミットとジョナサン・ローゼンバーグが、経営哲学と Google における実践を開陳する自画自賛の書かと思って読み始めたが、内容が具体的で説得力に富むこともあり意外に役立ち感があった。企業文化や経営戦略、人材、意思決定、コミュニケーション、イノベーションなどについて、それぞれ章を設けて論じる。プロトタイプを90分で作ってしまったグーグル・グラスの開発経緯や、「10倍のスケールで考えよ」と指示を出すラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンのエピソードなど、具体的な事例を随所に盛り込んでおり飽きさせない。彼我の差は大きくすぐに役立つ内容ではないが、経営者視点から見た Google の在り方を知るだけでも価値がある。翻訳も悪くないので読んで損はない。

 成功やプロダクトの優位性を支えるのはスピードという信条やコンセンサスには意見対立が必要といった考え方は実に Google らしい。一方で多くの企業が採用している経営管理プロセスは「100年以上前の産物」と鋭く批判する。全体的な情報を握っているのはトップだけで、既存の企業経営は意思決定のスピードをあえて遅くするように設計されているとこき下ろしている。思い当たるフシがある方も少なくないだろう。

 出色なのは企業文化の章だ。スマートクリエイティブを惹きつけるのは企業文化だと強調する。Google では 社員を窮屈な場所に押し込め、仕事も食事も生活も共にし、組織再編は1日ですませるという。財務やセールス、法務などの共通部門は議論の主導権を握るべきではなく、プロダクト担当者が大きな影響力をもつべきだと主張する。ちなみにスマートクリエイティブとは Google が求める人材像。実行力に優れ、単にコンセプトだけではなく、消費者の視点からプロトタイプを作る人間を指している。

書籍情報

How Google Works~私たちの働き方とマネジメント~

エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ著、土方奈美・訳、日本経済新聞出版社、p.376、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。