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横田英史の読書コーナー

水を石油に変える人~山本五十六、不覚の一瞬~

山本一生、文藝春秋

2017.10.11  10:13 am

 稀代の詐欺師・本多維富(ほんだ これとみ)を扱ったノンフィクション。本多は、本書のタイトルとなっている「水から石油」のほか「藁から真綿」を作ると吹聴して出資を募る詐欺を繰り返す。科学的にありえない話にかかわらず大学教授や実業家などの専門家が騙されるのは実に不思議だが、実は本書を読んでも手口は闇の中である。どのように詐欺を見破ったかについては詳細に説明しているものの、決定的な証拠(石油にすり替える前の水の入った瓶)は発見されないままである。あり得ない話に騙される不可思議な人間心理について興味のある方に向く。

 主人公を取り巻く人間たちも多彩である。例えば副題に入っている海軍次官だった山本五十六、「特攻の生みの親」大西瀧治郎、さらに詐欺一味に加わった東勝熊(ひがし かつくま)、政界の黒幕といわれた辻嘉六などなど。例えば東は米国では柔道家、ドイツでは社交倶楽部の経営者、日本で石油輸入会社の役員を務めるなど波乱の人生を歩んだ人物である。

書籍情報

水を石油に変える人~山本五十六、不覚の一瞬~

山本一生、文藝春秋、p.253、¥1912

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。