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横田英史の読書コーナー

マッキンダーの地政学 ~デモクラシーの理想と現実~

ハルフォード・ジョン マッキンダー、曽村保信・訳、原書房

2017.6.22  11:35 am

 地政学(Geopolitics)の祖と呼ばれるマッキンダーの著。地理的な事実をわきまえて戦略を立てることの重要性を説く。安倍政権の外交戦略が地政学的な考え方を取り入れたこともあり、最近になって色々なところで取り上げられている。地政学のバイブルとも称されるが、それも納得できる内容である。世界地図レベルの広い視野で書かれており、世界政治の大きな流れを考えるうえで役立ち感がある。

 著者は国際関係を地理的な枠組みでとらえ、歴史を辿りながらその正当性を論じる。発行されたのは1919年と第一次世界大戦の時代だが、変化のない地理を重視することもあり古さを感じさせない。示唆に富む内容を含み、第2次世界対戦におけるナチス・ドイツとソ連との死闘を予見している。ちなみに本書には地政学という言葉は登場しない。原題は「デモクラシーの理想と現実」である。

 本書で有名なのは「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する」の一節。ここでいうハートランドはシベリアからイランに至るユーラシア大陸の中核地域を指す。

書籍情報

マッキンダーの地政学 ~デモクラシーの理想と現実~

ハルフォード・ジョン マッキンダー、曽村保信・訳、原書房、p.320、¥3456

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。