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横田英史の読書コーナー

悪癖の科学~その隠れた効用をめぐる実験~

リチャード・スティーヴンズ、藤井留美・訳、紀伊國屋書店

2016.12.22  2:33 pm

 止めようと思うが止められない、世間ではマイナスイメージで見られている悪癖には、ちゃんとした効用があることを心理学の実験をもとに明らかにした書。イグ・ノーベル賞を受賞したこともある心理学者が、クスッとさせる軽妙な筆致で記述しておりスイスイ読み通せる。正月休みに、寝転びながら読むのに向く書である。

 取り上げるトピックスは、セックスに始まり酒、薬物、悪態(汚い言葉)、無謀運転(スピード狂)、恋愛など幅広い。例えば飲酒は、注意をコントロールしたり、集中させたりする能力を損なわせるが、それによって創造力が向上する。適量なら、心臓病やうつ病のリスクを下げてくれる。しかも、二日酔いという飲み過ぎ防止のためのストップボタンさえ用意していると絶賛する。

 悪態にも痛みに耐えるのを助けてくれる立派な効用がある。死を目前にしてストレスも感情も極限状態にあるときに出るのは、実は侮蔑語だったり卑猥語だったりする。このほか、スカイダイビングなど、危険と隣り合わせのスポーツをなぜ人間が挑戦するかなどについても論じる。

書籍情報

悪癖の科学~その隠れた効用をめぐる実験~

リチャード・スティーヴンズ、藤井留美・訳、紀伊國屋書店、p.284、¥1728

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。