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横田英史の読書コーナー

基準値のからくり~安全はこうして数字になった~

村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生、ブルーバックス

2014.8.31  10:03 am

 安全を担保するための基準値がどういった根拠で定められたかを詳細に解説した書。知られざる基準値の世界はけっこうディープで面白い。安全を左右するはずなのに達成率0%の基準値が存在したり、ひじきやコメに多量に含まれる発がん性物質のヒ素に基準値がなかったり、運転手の60%以上が高速バスの夜間走行距離基準に自信がなかったりと、摩訶不思議な世界を詳らかにしている。興味深い話がギッシリ詰まった優れた啓蒙書でお薦めである。

 本書が扱う基準値は広い。賞味期限と消費期限、水道水質、放射線量、PM2.5、魚介類の平均水銀含有量、高速バスの夜間走行距離などなど。技術的な話が少なくないが、図を利用して分かりやすく説明しており支障なく読み通せる。床に落ちた食べ物でも3秒以内に拾って食べれば安全という「3秒ルールは科学的か」といった、箸休めの話題も用意されており楽しめる。同時に、間違った解釈で一喜一憂する世間やマスコミの実情に警鐘を鳴らす。やみくもに数字を信じるのではなく、根拠を知ることの大切さがよく分かる。

書籍情報

基準値のからくり~安全はこうして数字になった~

村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生、ブルーバックス、p.288、¥994

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。