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横田英史の読書コーナー

第五の権力~Googleには見えている未来~

エリック・シュミット著、ジャレッド・コーエン著、櫻井祐子・訳、ダイヤモンド社

2014.4.15  12:00 am

 米Googleのエリック・シュミット会長によるIT未来論。原書「The New Digital Age」が出たときにKindle版を購入し読み始めたが、マスメディアやプライバシーを論じる章で挫折した。ありがちな議論が展開されており退屈で中断したのだが、これが大失敗だった。もう少し読み進まないと、本書の良さは分からない。最後まで通読すると、筆者の視野の広さ、全体を俯瞰する能力の高さを知ることができる。刺激的な議論を期待すると失望するかもしれないが、淡々とした指摘に重要な意味が含まれている。今後の世界を垣間見ることができる良書で、読んで損はない。
 本書は7章から成る。報道とプライバシーの未来、国家の未来、革命の未来、テロリスムの未来、紛争と戦争の未来、復興の未来などについて、確かな技術的バックグラウンドに基づき論じる。現在の状況を考えると、本書の指摘の的確さと奥の深さには驚かされる。国家、革命、テロリズムといったテーマの選定に米国らしさを感じるし、中国や中東といった地域、ビットコインやロボット兵士などの新技術、サイバー攻撃に代表されるインターネット時代の問題に目を向けて議論を進めるところはさすがである。

書籍情報

第五の権力~Googleには見えている未来~
エリック・シュミット著、ジャレッド・コーエン著、櫻井祐子・訳、ダイヤモンド社、p.424、¥1,944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。