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横田英史の読書コーナー

ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ

藤原智美、文藝春秋

2014.2.24  12:00 am

 従来の“書きことば”ではなく、“ネットことば”が幅を利かせようとしている現状を憂えた書。筆者は、インターネットがことばを変え、それが国あり方まで変えようとしていると危機感を募らせる。ネットことばは、話しことばのように書いて瞬時に多くの人に届けられるが、熟慮とは縁遠い。ネットことばが主流になり、紙とインクの書きことば終わるとき、同時に何が終わり、何が始まるかを本書を通じて明らかにする。一般受けする書ではないが、インターネットが言葉に与える影響やメディア論に興味をお持ちの方にお薦めしたい1冊である。
 筆者は、日本はことばから狂い始め、今や政治や司法、教育が揺らいでいると訴える。書きことばの信頼性失墜が、検察官による証拠改竄、政治家のことばの幼稚化、暴言・失言につながり、その結果、書きことばで成立している憲法は危機に瀕していると分析する。書きことばがネット言葉に移行することで、プロフェッショナルな書き手が不必要になっていることへの危機意識も強い。書く力や文章への責任よりも、テーマや企画、ネタをいち早くネットことばにできるかが重視されていると嘆く。
 筆者は、対話やコミュニケーションを重視する社会のあり方に懐疑的である。対話力やコミュニケーション力が幸福や豊かな人生につながるという見方には偽りが隠れていると主張する。書くことは思考であり、その思考を深め継続することで、生き延びる力が得られることをアンネ・フランクを引き合いに出して明らかにする。インターネット社会やSNSで喧伝される「絆」や「つながる」ことに筆者は欺瞞の匂いを感じるという。

書籍情報

ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ
藤原智美、文藝春秋、p.231、¥1,155

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。