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横田英史の読書コーナー

にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語

サム・キーン、大田直子・訳、朝日新聞出版社

2014.2.13  12:00 am

 DNAに残された痕跡をもとに、人類や生物の歴史を解明する書。タイトルの「にわかには信じられない」とは少々大げさだが、知的好奇心をくすぐる良書であるのは確かだ。冒頭部分は数々の発見物語を中心にDNAや遺伝子の研究にまつわる逸話を紹介する。個性豊かな科学者たちのエピソードは楽しく読めるが、専門的な内容も多くやや退屈かもしれない。だが、後半になると俄然面白くなり、読むペースが上がる。
 例えば人間とチンパンジーの違い、ヒトとチンパンジーを交配させようとする科学者、人間の脳(例えばアインシュタインの脳)の大きさ、著名人の偉業と遺伝病との関係、ツタンカーメンのミイラのDNAが明かす王族の秘密といった話を、下世話な話題を織り交ぜながら筆を進める。なかなかの手際である。最初の部分が退屈だからといって投げ出さずに読み続けていただきたい。

書籍情報

にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語
サム・キーン、大田直子・訳、朝日新聞出版社、p.416、¥2,520

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。