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横田英史の読書コーナー

習慣の力

チャールズ・デュヒッグ、渡会圭子・訳、講談社

2013.7.9  12:00 am

 ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー欄にずっと居座っている書。気になっていたが、ようやく日本語訳が出たので購入。「キーストーン・ハビット(要となる習慣)」と呼ぶ良い習慣を増やせば、人生や生活、ビジネス、社会は劇的に改善することを、豊富な事例と最新の研究成果に基づいて論じている。当初は単純なノウハウ本かと思ったが、意外に底が深く役立ち感がある。翻訳も悪くないのでスイスイ読める。部課長クラスの方々にお薦めの1冊である。
 米デューク大学の研究によると、人の行動の40%以上がその場の決定ではなく習慣によるものだという。しかも、脳はよい習慣と悪い習慣の区別をつけられない。悪い習慣が一度身につくと、何かのキッカケでそれがすぐに現れてしまう。逆も同様だ。それだけ習慣の行動に与える影響は大きい。では、どうすればキーストーン・ハビットは身につくのか。筆者はキーストーン・ハビットを身につけたくなるような、ある種のキッカケと報酬を見つけ出すことがポイントという。そして、そのキッカケと報酬に結びつく“欲求”によって習慣を長続きさせることができる。
 本書は「個人の習慣」「成功する企業の習慣」「社会の習慣」と3部構成で、習慣の威力について解説する。米国の本らしく、読み応えがあるのは事例の数々。例えば「消臭剤のファブリーズがヒット商品になった理由」「大手アルミ・メーカーのアルコアはダメ会社から優良企業になった理由」「スターバックスのスタッフを一流に育てるプログラム」などは、いずれも“習慣づけ”がポイントだったことを明らかにする。特にアルコアとファビリースの話は興味深い。

書籍情報

習慣の力
チャールズ・デュヒッグ、渡会圭子・訳、講談社、p.394、¥1,995

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。