2050 老人大国の現実~超高齢化・人口減少社会での社会システムデザインを考える~

小笠原泰、渡辺智之、東洋経済新報社

 高齢者が1000万人を超える2050年の日本。団塊ジュニアが後期高齢者期に入り終える時期である。実質GDPは現在より4割落ち込む。団塊ジュニアは団塊とそれ以前の世代の資産を食いつぶし貧困に陥る。その結果、2050年には国税収入のほとんどを貧しい高齢者の生活保護で使い切ってしまう。こうした否応なくやってくる2050年を想定したときに、在るべき社会保障制度の姿を大胆に論じた書である。
 筆者が展開する社会保障制度はあまりにドラスチック。劇薬だし、議論に粗さが目立つのも確かである。筆者のプランが実行される可能性はきわめて小さい。しかし、劇薬を処方しなくてはならないほど今の日本が罹っている病は重い。筆者の危機感がびしびし伝わってくる警世の書であり、筆者の意見に耳を傾けるのは悪くない。
 本書はまず現在の社会保障制度を槍玉に挙げる。持続的な経済成長を前提にした楽観的議論に終始している政治家と官僚のまやかしを批判する。甘言を弄しながら、昔と同じことを手を替え品を替え「緊急経済対策」として繰り返し財政赤字を積み上げる政策を、雨乞いをする祈祷師と同じだと語る。この辺りの議論の展開はなかなか鋭い。
 筆者は、福祉国家からナショナルミニマル国家への転換が不可欠だと断じ、在るべき社会保障システムのアウトラインを描いている。ナショナルミニマルとは、各人が幸せになるための最低限のサービスを提供・維持する社会である。つまり最大公約数的なレベルにまで国家の役割を絞り込む。これまでの最小公倍数的な政策とは真逆であり、現在の公的年金制度を清算し、生活保護を見直すことが欠かせないと筆者は主張する。

書籍情報

2050 老人大国の現実~超高齢化・人口減少社会での社会システムデザインを考える~
小笠原泰、渡辺智之、東洋経済新報社、p.289、¥1,890

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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