横田英史の読書コーナー
人間の心が分からなかった俺が、動物心理学者になるまで
岡ノ谷一夫、新潮社
2025.10.5 9:22 am
動物心理学者である著者の青春記。幼少期から始め、惨めな浪人時代、お馬鹿な学生時代、米国の流儀に戸惑う留学時代、不遇な研究者時代、学者として世間に認められるまでの苦難の道のりを面白おかしく綴る。筆者は評者と同世代なので、出てくる学生時代の思い出話がいちいち懐かしい。
本書は、新潮社の雑誌「考える人」の連載を加筆・修正したもの。内容が軽い上に、洒脱で軽妙な文章なのですいすい読める。大阪-東京間の新幹線の往復で確実に読み終えることができるだろう。出張のお供に向く。
筆者が動物心理学に着目した経緯や、大学と学会で認められるまで苦労話はなかなか面白い。心理学と生物学の間で、筆者は大いにあがきもがくことになる。筆者の立ち上げた動物心理学者は文学部(心理学)と理学部(生物学)の学際領域であり、学部間の綱引き(あるいは押し付け合い)は興味深い。
最後に登場する「ジュウシマツの歌文法の発見」は、偶然の妙や学問の意味・意義を感じさせる。鳥の歌声の話なのに、生成文法理論の提唱者で言語学の大家・チョムスキーが登場するのも興味深い。本書は、抜群に面白かった「僕には鳥の言葉がわかる」の類書かと思って購入したが、大いなる勘違いだった。似て非なる内容なので要注意である。
書籍情報
人間の心が分からなかった俺が、動物心理学者になるまで
岡ノ谷一夫、新潮社、p.208、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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