横田英史の読書コーナー
異形のヒグマ〜OSO18を創り出したもの〜
山森英輔、有元優喜、講談社
2025.9.30 9:18 am
道東で66頭の牛を次々と襲ったヒグマ「OSO18」と人間との闘いを、NHKのディレクターが追ったドキュメンタリー。メディアに大々的に取り上げられ、「超巨大」「忍者」「猟奇的」「快楽犯」「最凶」「怪物」と人間が作り上げた虚像と、OSO18の全く異なる実像を描く。想像できなかった意外な最期も劇的である。
カメラに姿を撮らせない、襲った牛を傷つけただけで食べない、仕掛けた罠にかからない、足幅が18cmと巨大など、OSO18はこれまで人間が対峙したことのない習性のヒグマだった。これらの習性を、取材班はベテランハンターや学者と連携しながら本当の姿を暴いていく。
例えば、OSO18が駆除されたあとに、筆者が死骸や糞尿の山(ダンプカー3台分)から見つけ出した上腕骨のDNAから食性を分析。OSO18が4〜8歳まで、常に肉を食べていたことが判明する。一般的に植物質の食べ物が主食のヒグマにしては異例である。著者らは、個体数が急激に増加したカモシカの存在に、食性が変化した原因だとする。
本書はノンフィクションとして面白いだけではなく、人間と動物の在り方を考えさせる良書に仕上がっている。クマを1頭も撃ったことのない駆け出しハンターの仕留められ、珍味とされる手足は在日中国人に売られ、他の肉はジビエ料理として人間に食される最期は、ちょっと物悲しい。
書籍情報
異形のヒグマ〜OSO18を創り出したもの〜
山森英輔、有元優喜、講談社、p.256、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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