横田英史の読書コーナー
エビデンスを嫌う人たち〜科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?〜
リー・マッキンタイア、西尾義人・訳、国書刊行会
2024.11.9 12:06 pm
気候変動や新型コロナの否定、反ワクチン、反GMO(遺伝子組み換え作物)、陰謀論などの科学否定論者とはどういう人たちか、どのような活動を行い、何を考えていて、どう付き合うべきか、説得可能かなどを哲学者が考察した書。トランプが米国大統領に復帰するいま、科学否定論者の実態を知ることは悪くない。説得が一筋縄ではいかないことも、本書を読むとよく分かる。
筆者は、科学否定論者との対話の仕方を学び、彼ら・彼女らの考え方を変えられないかを検討することが本書の目的だと語る。科学否定論者を説得するには、信頼を築き、敬意を示し、冷静であることが肝要だと説く。科学否定論者に反論しないことが最悪の選択肢だという。科学否定論者に共通する特徴として5つ要素を挙げる。①証拠のチェリーピッキング(都合よく解釈)、②陰謀論への傾倒、③偽物の専門家への依存、④非論理的な推論、⑤科学への現実離れした期待である。瞠目すべき内容とは言いづらいが、納得感はある。
米国における政治の2極化が、科学否定の風潮を悪化させたと断じる。例えば新型コロナの否定は政治的に利用され、米国に惨事をもたらした。科学の政治利用を食い止めなければ、将来において何が起こるかを示す先行事例だったと語る。日本でも感情論に流され、科学否定的な見解をときおり見かけるだけに、日本の状況への言及がないところは残念である。
ちなみに筆者は哲学者。「地球平面説の国際学会」に潜入して参加者に直撃インタビューしたり、知人の科学否定論者の説得を試みるなど、なかなか行動的である。本書にはルポルタージュ的な要素があり、楽しく読み進むことができる。
書籍情報
エビデンスを嫌う人たち〜科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?〜
リー・マッキンタイア、西尾義人・訳、国書刊行会、p.432、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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