横田英史の読書コーナー
ソニー再生〜変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」〜
平井一夫、日本経済新聞出版
2021.7.20 6:34 pm
不振にあえいでいたソニーを再建した平井一夫の書。経営論というよりも「私の履歴書」の色彩が濃い。子供時代を含め「異端」「異邦人」だった経験が、ソニー、ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ、ソニー・コンピュータエンタテインメントの再建に役立ったとする話は興味深いが、諸先輩への遠慮もあって歯切れは良くない。日本経済新聞の名物コラム「私の履歴書」の場合、サラリーマン社長の話はイマイチなことが少なくないが、本書も残念ながらその延長線上といえそうだ。
筆者がハワード・ストリンガーの後継として社長に就任した当時のソニーは、5000億円を超える大赤字を出すなどどん底だった。就任後の日経新聞を見ても、「32年ぶりの安値、経営戦略なお曖昧」「ソニー株の歴史的安値、日本企業の陰りを象徴」といった辛口の見出しが並ぶ。「創業者の盛田昭夫を入社式でしか見たことがない平井世代は果たしてソニーを救えるのか」と平井への見方も厳しかった。
しかし勝てば官軍。会長就任時には、「ソニー株復活 カギはDNAを生かした改革」「エレキ依存脱却へ ソニーが育む成長の種」といった見出しが並ぶようになる。この復活劇の裏には、「リーダーはEQが高くあれ」「痛みを伴う改革は先送りせずやり遂げる」「社員たちの心の奥底に隠された『情熱のマグマ』を解き放ち、チームとしてのちからを最大限引き出す」といった経営哲学があったと語る。
書籍情報
ソニー再生〜変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」〜
平井一夫、日本経済新聞出版、p.280、¥1760
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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