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横田英史の読書コーナー

NEVER LOST AGAIN〜グーグルマップ誕生(世界を変えた地図)〜

ビル・キルデイ、大熊希美・訳、TAC出版

2018.12.30  10:10 am

 もはやスマホの必須アプリとなり、存在しない生活が考えられないグーグルマップ(およびグーグルアース)の誕生物語。米テキサス大学の同級生が二人三脚でデジタル地図サービスを、グーグルマップとグーグルアースに仕立て上げ、イングレスやポケモンGOの大成功につなげるまでを描いた書。開発の主役はエンジニアのジョン・ハンケ。友人である筆者はマーケティング担当者として支える。ハンケが立ち上げた米キーホールは倒産の危機に瀕するが、米軍のイラク進行時にCNNが利用したことで一挙にブレークし、米グーグルに買収される。

 グーグルマップなどの開発に米SGIから輩出された人材がかかわっているなど、シリコンバレーの人材や企業が核分裂を起こしながら成長していくエコシステムがよく分かる。グーグルマップの名称変更や、マーケティングよりもプロダクトというGoogleの社風などエピソードが満載である。難を言えば筆者の専門がマーケティングということもあって技術的な内容は物足りない。Googleの良い面だけを強調している感があるが、企業買収におけるGoogelの意思決定プロセスやマリッサ・メイヤーとの確執など読ませる場面が多いのも事実。おすすめの1冊である。

書籍情報

NEVER LOST AGAIN〜グーグルマップ誕生(世界を変えた地図)〜

ビル・キルデイ、大熊希美・訳、TAC出版、p.464、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。