横田英史の読書コーナー
暴走する能力主義
中村高康、ちくま新書
2018.7.27 7:00 pm
世の中が求める“新しい時代”に適用した能力とは何かを問うた新書。筆者はこう主張する。いまの日本社会は「現在の産業や社会にマッチした新しい能力の開発しなければならない」という強迫観念に苛まれている。しかし新しい能力として議論されている中身は、目新しさに乏しく陳腐でさえある、と。学者らしく綿密な論理構成で説得力に富む。
筆者は学習指導要領の改訂を俎上に載せる。新しい能力とはいうものの、旧来のシステムの否定に力点が置かれ、変えれば何かいいことがあると思い込む悪弊に陥っているという。本質的には何も変わらないまま、議論だけが空回りしている。
新学習指導要領は実用主義的なイメージを旗印に、とにかく教育制度を変えたいと欲し、教育システムを一貫した思想で塗り込めようとする意思を感じると、筆者は危機感を募らせる。ただ、強い意思の実態に迫りきれていないのは少々残念である。
書籍情報
暴走する能力主義
中村高康、ちくま新書、p.242、¥886
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
新着記事
-
アナログ・デバイセズとBMWグループが協力して業界をリードする自動車用10Mbイーサネットを提供、ソフトウェア定義型車両を実現
2024.3.8 5:59 pm
-
アナログ・デバイセズが心肺管理(CPM)システム「Sensinel by Analog Devices™」の 米国FDAへの510(k)申請承認を受け販売開始
2024.3.7 6:10 pm
-
キーサイトがWi-Fi 7対応のワイヤレス・テスト・プラットフォームを発売
2024.3.7 5:59 pm
-
インフィニオンがCoolSiC™ MOSFET 750 V G1を発表 車載および産業ソリューションの進歩に貢献
2024.3.6 7:02 pm
-
STマイクロエレクトロニクスが産業・車載機器に最適な高電圧・高精度双方向電流センス・アンプを発表
2024.3.6 5:54 pm
-
STマイクロエレクトロニクスが3D深度センシングを強化する最新のToF測距センサを発表
2024.3.6 5:41 pm
-
リテルヒューズが金属酸化物バリスタ「SM10シリーズ」を発売 自動車や電子機器のサージ保護に
2024.3.5 5:25 pm
-
リテルヒューズの最新の超小型 7 mm リードスイッチ、高信頼性と長寿命サイクルを提供
2024.3.1 6:15 pm
SOLUTION
REPORT
横田英史の 読書コーナー
お薦めセミナー・イベント情報
ET/IoT Technology Show
Back Number
Pick Up Site
運営
株式会社ピーアンドピービューロゥ
〒102-0074
東京都千代田区九段南4-7-22
メゾン・ド・シャルー3F
TEL. 03-3261-8981
FAX. 03-3261-8983