横田英史の読書コーナー
世界からバナナがなくなるまえに~食糧危機に立ち向かう科学者たち~
ロブ・ダン、高橋洋・訳、青土社
2017.11.24 10:32 am
生産性と効率性を追い求めた結果、遺伝的な多様性が乏しくなっている穀物が置かれた危機的状況を明らかにしたノンフィクション。アイルランドのじゃがいも飢饉や繰り返される作物全滅の歴史を振り返りるとともに、現在主流となっている単一栽培の問題点、遺伝工学的アプローチによって病害虫に強い穀物を作り出す最新の研究などを紹介する。豊富な事例を用いた議論には説得力がある。残念なのは図が貧弱で見づらいところ。せっかくの良書なのにもったいない。
興味深いのはヘンリー・フォードの農園経営の失敗だ。自動車工場と同じ発想でアマゾンでゴム農園を経営したものの、効率化を追い求めた結果、病害で全滅したというもの。今につながる農業の難しさがよく分かるエピソードである。
病害虫に強い作物を作る品種改良も一筋縄ではいかない。病害虫がすぐに耐性を持ってしまう状況を筆者は「赤の女王との果てしないレース」と表現する。このレースに勝つために重要なのは野生種の根や種子を保存し、穀物の遺伝的多様性を確保しておくこと。筆者は、政治の波に翻弄された野生種コレクションの歴史や、コレクションした瞬間に野生種の進歩が止まってしまう難しさを明らかにする。
書籍情報
世界からバナナがなくなるまえに~食糧危機に立ち向かう科学者たち~
ロブ・ダン、高橋洋・訳、青土社、p.397、¥3024

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
新着記事
-

インフィニオン、NVIDIA Jetson Thor向け認証済みTPMソリューションにより量子時代の脅威に対応するフィジカルAIセキュリティを強化
2026.6.11 5:49 pm
-

オンセミ、業界初のパワーエレクトロニクス設計を簡素化するElite Pairing Studioを発表
2026.6.10 6:03 pm
-

インフィニオンとシーメンス、SiCを活用し、データセンターや工場における電気的保護を強化
2026.6.9 6:12 pm
-

半導体製造装置の2026年第1四半期世界総販売額は前年同期比14%増
2026.6.5 6:30 pm
-

Microchip社、AIデータセンターのレイテンシとシグナル インテグリティの課題を解決するXpressConnect™ PCIe® 6.0/CXL 3.1リタイマを発表
2026.6.4 7:02 pm
-

次世代AIファクトリーを支えるオンセミの電源ソリューション
2026.6.4 6:49 pm
-

STマイクロエレクトロニクス、産業機器の状態モニタリングに最適なセンサ内AI搭載の高性能振動センサを発表
2026.6.4 5:34 pm
-

STマイクロエレクトロニクス、AIサーバからロボティクスまで、幅広い高性能アプリケーションの電力効率向上に貢献する新しいGaN製品を発表
2026.6.1 6:22 pm
SOLUTION
REPORT
横田英史の 読書コーナー
お薦めセミナー・イベント情報
ET/IoT Technology Show
Back Number
Pick Up Site
運営

株式会社ピーアンドピービューロゥ
〒102-0074
東京都千代田区九段南4-7-22
メゾン・ド・シャルー3F
TEL. 03-3261-8981
FAX. 03-3261-8983














