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横田英史の読書コーナー

実験国家 アメリカの履歴書 第2版~社会・文化・歴史にみる統合と多元化の軌跡~

鈴木透、慶應義塾大学出版会

2017.9.5  3:52 pm

 筆者が慶應義塾大学日吉キャンパスで行っている講義「地域文化論 I 」の内容をベースにした米国論。米国の政治、経済、法律、芸術(建築)、文化、社会、宗教などを、植民地時代から21世紀までの歴史的背景を踏まえて分析する。多くの批判にさらされながらもトランプ旋風がいまも吹き荒れる、日本人に不可思議な米国を理解する上での基礎知識を得ることができる好著である。

 筆者は、現実を自分たちに都合のいいように歪曲し、独断的な物語を突き進んでしまう米国社会の傾向を歴史を追いながら明らかにする。またプロテスタントの価値観を絶対視する立場は、プロテスタント以外の宗派や宗教を否定する方向性を持っており、WASP 以外の人を排除する動きと容易に結びつくという。

 現在の米国については、「自己中心主義の殻の中で分断されており、不信と分断の負の連鎖に陥り自滅を続ける国家」であるとともに、「実験国家としての色彩が濃く、実験の失敗を新たな推進力に変えてきた精神は完全には廃れていない」と分析する。

書籍情報

実験国家 アメリカの履歴書 第2版~社会・文化・歴史にみる統合と多元化の軌跡~

鈴木透、慶應義塾大学出版会、 p.264、¥2700

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。