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横田英史の読書コーナー

武器ビジネス(下)~マネーと戦争の「最前線」~

アンドルー・ファインスタイン、原書房

2016.4.22  5:44 pm

 詳細な取材と調査をもとに、「武器ビジネス」を白日のもとにさらした書の下巻。上巻は英国が中心だったが、下巻では米国に焦点を当て軍産議複合体の実態を明らかにする。それにしても米国の政界、財界、官界が一体になって軍事予算を掠め取っている実態はすさまじい。米国政府の要人たちが、政府と防衛受注企業との間の回転ドアを行き来するさまを筆者は活写し、合法的な贈収賄行為が横行していると断じる。とりわけCIAの創設が、新たな秘密のベールを作り出し、説明責任を弱めて、米国の国家的利益と私的利益の境界を曖昧にしたと指弾する。これぞ“死の商人”といった人物が続々と登場しているのも下巻の見どころである。

 このほか武器ビジネスがアフリカ諸国の民族紛争を助長している実態や、イスラエルとアパルトヘイト時代の南アフリカの不適切関係を明らかにしている。前者は悲惨である。ルワンダやコンゴ、アンゴラ、スーダンなどの内戦の背景を紹介しているが、これらの国では、武器を買うために国の大部分は売り払われ、破壊され尽くした。武器を手に入れると、国のひ弱な政治秩序をさらに破壊するために使われ、新たな国家らしきものが誕生することさえ妨害した。後者については、イスラエルの急成長する兵器産業と南アフリカの孤立が、なかば公然の軍事同盟をもたらした。イスラエルの低迷する経済を後押しし、苦境に立つアパルトヘイト体制を強化したという。

書籍情報

武器ビジネス(下)~マネーと戦争の「最前線」~

アンドルー・ファインスタイン、原書房、p.443、¥2592

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。