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横田英史の読書コーナー

撤退戦の研究~くり返されてきた失敗の本質とは~

半藤一利、江坂彰、青春新書インテリジェンス

2015.7.24  10:36 am

 第2次世界大戦を題材に日本軍の組織としての問題点を取り上げるとともに、リーダー論を展開した書。同様のテーマを扱った書に名著「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」があるが、本書も悪くない。「なぜ失敗に学べないのか」「なぜ情報と補給の重要性を信じられないほど軽視するのか」といった話のほか、「平時のリーダー/戦時のリーダーとは」「組織を強くする人事/弱める人事とは」「情報を正しく読み解くコツ」「本当のリーダー」「会社を潰す経営者、六つのタイプ」といったテーマをカバーする。2000年に出版されたカッパブックスの復刻版だが古さをあまり感じさせない。
 日本の問題の一つに、歴史に学ばず、体験に学ぶ点が挙げられる。例えば日本海軍は、一度成功したら病みつきになり、何度も同じ作戦を繰り返し失敗を続けた。このほか敗戦責任や分析を曖昧にして、圧倒的な物量戦に負けたと一億総ざんげしてしまったところに、平成大停滞の遠因があるという指摘も興味深い。敗戦を終戦、撤退を転進、不正を不適正と言い換えて、責任を曖昧にする手法はいまだに見られる悪弊である。

書籍情報

撤退戦の研究~くり返されてきた失敗の本質とは~

半藤一利、江坂彰、青春新書インテリジェンス、p.256、¥1080

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。