Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

危機と雇用~災害の労働経済学~

玄田有史、岩波書店

2015.5.3  9:41 am

 東日本大震災が雇用に与えた影響や雇用対策の有効性について論じた書。定量的な調査データを駆使しており説得力がある。2008年のリーマン・ショックによって雇用政策を見直していたことが、2011年の東日本大震災に有効に働いたという視点は興味深い。例えばリーマン・ショック時に導入された雇用調整助成金の緊急措置や雇用創出基金事業は、完全失業率の上昇に一定の歯止めをかけたという。著者は労働経済学の東大教授で、「仕事のなかの曖昧な不安 揺れる若年の現在」「ニート―フリーターでもなく失業者でもなく」「孤立無業(SNEP)」などの著者。切り口の鋭さはさすがである。
 本書には、いろいろと考えさせられる内容が詰まっている。例えば震災で職を失ったことがキッカケになって、若者がニート化する傾向が強まっているという。震災によって以前暮らしていた地域と異なる場所に避難や転居した場合ほど無業になる傾向が強いというのは何となく分かる気がするが、数字で押さえられると説得力が増す。
 このほか被災した企業のうち、会社の強みとして「経営者リーダーシップ」を自認しているほど雇用拡大に積極的という指摘は面白い。こうした企業の44.5%が震災後に雇用を拡大しているのに対し、経営者のリーダーシップを認識していない企業は30.6%にとどまっているという。

書籍情報

危機と雇用~災害の労働経済学~

玄田有史、岩波書店、p.256、¥2808

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。