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横田英史の読書コーナー

沖縄の不都合な真実

大久保潤、篠原、新潮新書

2015.3.31  7:21 pm

 米軍普天間飛行場の辺野古移設が政治問題化しているなか、沖縄の本音を数多く教えてくれる書。「基地問題の本質は何か」「政治家、建設会社、公務員、地元メディアに深く根を張る社会問題とは何か」「格差や差別の本質は何か」といった観点から沖縄を論じる。日本経済新聞の元那覇支局長と評論家の筆者が、利権の構造とタブーを次々に明らかにする。観光で訪れるだけでは分からない沖縄の一面を知ることができる。沖縄を論じるときに読んでおくべき書である。
 本書で興味深いのは、沖縄の人たちが本土に抱く複雑な感情「沖縄ナショナリズム」を取り上げていること。沖縄のナショナリズムをうまく利用したのが米国であり、反戦運動からは「反日」という沖縄人の本音が見えるという指摘は鋭いし、深く考えさせられる。
 「基地があってこその沖縄経済」という指摘はきわめて示唆的である。基地が島外に移設されることで米軍が落とすカネがなくなり、国からの振興予算がなくなれば、いくら観光業が頑張ったとしても沖縄経済は立ちいかない現実を著者は数字にもとづき明らかにする。基地反対運動は、基地が帰ってこないことが前提であり、国からの振興予算をもらい続けるための方便だと断じる。政治家や活動家は保守も革新も同根であり、それぞれの立場で演じているに過ぎないと指摘する。反基地運動は“歌舞伎”であり、茶番だと手厳しい。

書籍情報

沖縄の不都合な真実

大久保潤、篠原、新潮新書、p.221、¥799

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。