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横田英史の読書コーナー

あなたの見ている多くの試合に台本が存在する

デクラン・ヒル、山田敏弘・訳、カンゼン

2015.3.25  4:02 pm

 アジアを中心にサッカーにおける八百長を学術的に研究した書。セリエAやプレミアリーグ、ブンデスリーガについても少しだが言及する。スキャンダラスなテーマを扱っているが、内容はいたって真面目で読み応えがある。法廷での証言や警察の取り調べにおける自白、隠し取りの録音テープ、さらには八百長データベースの構築によって、八百長の方法や動機、関与する人物や組織、市場規模など幅広いテーマを取り上げる。八百長に至るまでのプロセスも丹念に追っている。八百長を誘われるポジションは何か、八百長が疑われるプレーはどういったものか、八百長が多い時間帯はいつかといった興味深い話題を取り上げており、スポーツ好き、サッカー好きの方にお薦めの1冊である。

 八百長の動機は世界共通でカネである。しかし八百長に手を染めるのは、収入が少ない若手ではなく、十分にキャリアを積み、試合結果に影響をあたえる能力を持つベテランだという。年上の選手は次の試合で選手生命が終わるかもしれないという強い危機意識があり、稼げるときに稼ぐという意識が動機になる。しかもベテラン選手が若手に八百長の仕方を教えることで、汚職の連鎖が起こる。

書籍情報

あなたの見ている多くの試合に台本が存在する

デクラン・ヒル、山田敏弘・訳、カンゼン、p.400、¥1998

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。