横田英史の読書コーナー
中村修二劇場
日経BP社 特別編集班、日経BP社
2014.12.4 3:17 pm
2014年のノーベル物理学賞を受賞した中村修二・米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の足跡をたどった書。青色LEDと中村修二をずっと追い続けてきた日経エレクトロニクスらしく、「当時の肉声」満載の書に仕上がっている。記事の蓄積と中村教授との信頼関係がモノを言っている、お薦めの1冊である。評者の古巣と後輩が出した本なのでバイアスがかかっているかもしれないが、ノーベル賞に免じてお許し頂きたい。
青色LEDの発明が新聞紙面を飾ったのは1993年11月こと。朝刊を読んだ日経エレ記者の動きは早かった。さすが専門記者である。すぐさま徳島に飛び、技術誌らしい記事を執筆した。その後も、輝度が上がったり寿命が延びるといった技術的な節目のたびに記事を書き、青色LEDと中村教授に密着し続けた。当時日経エレに在籍していた評者は、世紀の発明に対する編集部の興奮をいまでも思い出すことができる。本当にすごかった。
本書は、青色LEDの発明に関係する記事だけではなく、日亜化学工業からの退社、同社との特許係争などについての当時の記事、さらにはノーベル賞受賞後に行ったインタビューなどを収録する。いずれも貴重な記録である。毀誉褒貶が激しい中村教授だが、「本当のところは何だったのか」を知る上で役立つ書である。
書籍情報
中村修二劇場
日経BP社 特別編集班、日経BP社、p.296、¥1728
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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