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横田英史の読書コーナー

エンジニアリングの真髄~なぜ科学だけでは地球規模の危機を解決できないのか~

ヘンリー・ペトロスキー著、安原和見・訳、筑摩書房

2014.7.31  10:26 am

 一般に流布する「技術者よりも科学者が偉い」「科学の方が高尚」「エンジニアリングは泥臭い」といったイメージや、研究開発において最初に基礎研究、次に応用研究、最後に技術開発がくるというリニアモデルに異論を唱えた書。ロケットの打上げが成功すれば科学者の手柄、失敗すればエンジニアのミスにされかねない風潮に筆者は憤慨する。筆者はエンジニアリングの重要さを、飛行機やロケット、蒸気機関、ラジオなどの事例を挙げながら説く。

 今までなかったものを生み出すとき、技術が先行し、後付けで理論の確立や科学的な解明が行われる例も少なくない。例えば飛行機。原理を科学的に十分に説明できないうちに設計され、建造され、運用された。月面着陸のように、エンジニアリングが科学に先行するだけではなく、新しい科学領域を生み出すこともある。

 筆者は気候変動やエネルギー問題、環境汚染、惑星衝突といった全世界的危機を乗り越えるには、科学的に解明し、エンジニアリング的に解決することが欠かせないと語る。科学者とエンジニアは、それぞれの職業的な相違やプライドをわきに置き、現実的なエンジニアリング的な対策につながる研究開発に団結して当たらなくてはならない。本書はエンジニアに向けた応援歌といった趣があり、EISの読者の皆さんにお薦めの1冊である。

書籍情報

エンジニアリングの真髄~なぜ科学だけでは地球規模の危機を解決できないのか~

ヘンリー・ペトロスキー著、安原和見・訳、筑摩書房、p.342、¥3240

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。