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横田英史の読書コーナー

粘菌~その驚くべき知性~

中垣俊之、PHPサイエンス・ワールド新書

2014.7.22  10:22 am

 粘菌のもつ摩訶不思議な性質を紹介した書。単細胞の粘菌は脳をもたないのに、あたかも“知性”をもつように振る舞う。例えば迷路に置けば最短距離を結ぶし、周期的な変動を予測したような行動をする。ちなみに著者は、はこだて未来大学教授。「アメーバ状生物の粘菌が迷路の最短ルートを解く」という論文を2000年に雑誌ネーチャーで発表し、2008年にはイグ・ノーベル賞を受賞している。知の巨人と呼ばれた南方熊楠を驚かせるなど、魅力にあふれた粘菌を知りたい方にお薦めの手ごろな入門書である。

 本書は口絵のカラー写真を見るだけでも価値がある。粘菌の変形の数々、迷路の出入り口に餌を置き最短距離を結ばせる実験、粘菌の経路探索アルゴリズムをカーナビに応用したシミュレーション、地図で東京の場所に粘菌を移植し関東圏の都市に餌を置く実験などの写真が並んでおり楽しめる。最後の実験では、粘菌が作るネットワークがJR路線と似た形状になるという。口絵で紹介された実験は本文でしっかり解説されているので、興味のあるものだけをピックアップして読むのも手かもしれない。

書籍情報

粘菌~その驚くべき知性~

中垣俊之、PHPサイエンス・ワールド新書、p.198、¥864

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。