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横田英史の読書コーナー

沈みゆく帝国~スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか~

ケイン岩谷ゆかり、井口耕二・訳、日経BP社

2014.7.19  1:35 pm

 スティーブ・ジョブズ後の米アップルについて、元ウォール・ストリート・ジャーナルの敏腕記者が200人以上の取材をもとに書いたノンフィクション。筆者の前書きによると、5年の月日をかけて取材したという。ジョブスが亡くなる直前のアップルにおける動きや亡くなった後の状況を、独自の分析をもとに綴っている。

 「普通の大きな会社」になりつつあるアップルを描く本書を、アップルの現CEOのティム・クックが名指しで批判したことでも話題を呼んだ。ジョブズなきアップル社内の混乱の詳細や、あまり語られることのないクックについて、多くのページを割いているのも本書の特徴の一つであることも確かだ。一時代を築いたアップルを現在進行形で描いており、興味深いエピソードを数多く紹介している。多くの方にお薦めの1冊である。

 本書のカバー範囲は幅広い。例えば、ジョブズが亡くなる前後の状況、トップ交代に向けた動きと不協和音、クックやジョナサン・アイブなど幹部の素顔、Siriや地図アプリでの失敗、イノベーションのジレンマを地で行ったような最近の変調、Googleやサムスンとの対立、中国の製造委託工場フォックスコンの問題などを取り上げる。

書籍情報

沈みゆく帝国~スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか~

ケイン岩谷ゆかり、井口耕二・訳、日経BP社、p.540、¥2160

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。