横田英史の読書コーナー
ミツバチの会議:なぜ常に最良の意思決定ができるのか
トーマス・D. シーリー著、片岡夏実・訳、築地書館
2014.6.9 2:13 pm
ミツバチが巣作りで見せる習性についての過去60年にわたる研究成果を紹介した書。ミツバチには、働きバチと女王バチが新しい巣作りのために既存の巣を離れる「分蜂」という習性がある。移住するハチたちが木の枝に集まって、あごひげのような塊をつくり、数時間から数日間にわたって一緒にぶら下がる。この間に、新しい住み家の候補地を探し、全身を使ったダンスによって情報を共有。時間をかけて民主的に討論し新たな巣穴に決める。最終的に決まった場所は、外敵と冬の寒さから守られ、ハチミツを貯蔵する空間を十分に確保できる最適な巣穴である。自然界の巧妙な仕組みには、ただ驚かされるばかりである。
筆者はハチの尻振りダンスに隠された暗号を明らかにするとともに、分蜂の過程を詳説する。例えば探索バチはそれぞれ、尻振りダンスによって候補地までの距離や方角、おすすめ度を仲間に伝え、同調する者を募る。時間をかけた議論は徐々に収斂し、ぞのうちにハチは動かなくなる。そして、新たな巣へと飛び立っていく。実に巧妙で興味深い。
書籍情報
ミツバチの会議:なぜ常に最良の意思決定ができるのか
トーマス・D. シーリー著、片岡夏実・訳、築地書館、p.291、¥3024
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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