横田英史の読書コーナー
リスク化される身体~現代医学と統治のテクノロジー~
美馬達哉、青土社
2013.4.4 12:00 am
タイトルと中身に少しギャップがある書。なぜ「リスク」という言葉がさまざまな領域で使われ注目されるようになったのかを、医療・医学領域の状況から解き明かそうと試みた書。なかなかチャレンジングなテーマ設定であるし、ある程度は成功している。例えば筆者の本職である医療・医学分野に関する考察はなかなか鋭く読み応えがある。その一方で、医療・医学以外にまでスコープを広げた議論は、残念だが著者の思い入れが空回りしている。地に足が着いていない議論が多く、説得力が今一歩だ。
筆者の言う「リスク化される身体」とは、物理的な人間の身体ではなく、検査数値や行動パターン、心理学的特性、ライフスタイルなどのリスクによって数値化された心身情報の集合体を指す。病気や健康への対処方法が原因を取り除く臨床的なアプローチから、確率論的な予防医学(リスクの医学)へとシフトしているという現状認識を示す。従来の臨床医学とリスクの医学を対比した議論は切れ味が鋭く読み応えがある。
筆者はリスクの医学に懐疑的なスタンスをとる。リスクの医学では、症状や病気の有無とは無関係に、公衆衛生的な疫学研究によって見出されたリスクやリスクの組み合わせが、将来の疾病発生と関連するかどうかが重要になる。代表例がメタボリックシンドロームだ。国によってメタボリックの基準が異なっており、リスクの設定が恣意的になっていると指摘する。
書籍情報
リスク化される身体~現代医学と統治のテクノロジー~
美馬達哉、青土社、p.252、¥2,520

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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