2017年5月9日 from Maxim

チュートリアル RS-485:今なお最も堅牢な通信(2/2)

ワイヤレスネットワークの急速な普及にも関わらず、特に過酷な環境において、有線シリアルネットワークは引き続き最も堅牢で、高信頼性の通信を提供しています。これらの優れた技術で作られたネットワークは、産業およびビルオートメーションアプリケーションで効果的な通信を提供します。これらのアプリケーションではノイズ、静電気放電、および電圧フォルトに対する耐性が要求され、これらのすべてが稼働時間の増大につながります。 このチュートリアルではRS-485プロトコルについて概説し、産業アプリケーションで広く使用されている理由およびそれが解決する一般的な問題について解説します。

 

 

産業環境の課題

 

産業システムの設計者は、ハードウェアの損傷やデジタル通信への悪影響の可能性がある環境条件において堅牢な動作を確保するために、多数の困難な課題に直面します。

 

1つの例が、ファクトリーオートメーションにおける加工機械の自動制御です。プロセスコントローラは動作と環境の変数を監視および測定し、動作コマンドを送信して機器やアラームを制御します。 コントローラは、通常はマイクロコントローラベースの機械で、工場とアプリケーションのニーズを満たすように最適化されたアーキテクチャを備えています。これらのシステムのポイント間デー タ通信ラインは、過酷な電気的環境に晒されます。

 

産業アプリケーションで使用されるDC-DCコンバータには、高い入力電圧と絶縁型電力出力を備えたものがあります。多くのアプリケーションは、24Vまたは48V DC入力を使用して、ライン給電されていない分散アプリケーションに電力を供給します。12Vまたは5Vにダウンコンバートされた後で、ポイントオブロード変換を適用することができます。リモートセンサーやアクチュエータとの通信を維持するアプリケーションは、過渡、EMI、およびグランド電位差の影響に対する保護が必要です。

 

マキシム・インテグレーテッドなどの企業は、産業アプリケーション用ICが堅牢で過酷な電気的環境に耐えることを確保するために細心の注意を払っています。マキシムのRS-485トランシーバICは、高ESD耐性、大きい電圧スパイクに対するフォルト保護、ホットスワップ機能などの保護を内蔵し、エラーのないデータ伝送を実現します。

 

 

過酷な電気的環境からのシステムの保護

 

以下に示すのは、RS-485トランシーバに内蔵される場合がある保護機能です。

mx20170509_05

図4. ESD保護が不適切なICで発生する重大な故障

 

拡張ESD

静電気放電(ESD)は過電圧事象の1つで、電位が異なる2つの物質が接触したときに、蓄積された静電荷が転移して、スパークが発生します。多くの場合、ESDスパークは人間と周囲との相互作用によって発生します。これらの偶発的なスパークによって、半導体デバイスの特性が変化し、性能の低下または完全な破壊につながります。また、ESDはケーブルの交換時やI/Oポートに触れてしまったとき、電子システムに対する脅威となります。これらの日常的なできごとに伴う放電は、1つまたはそれ以上のインタフェースICを破壊し、ポートを無効化します(図4)。保証修理のコストが上昇するとともに、製品の品質に対する印象が悪化するため、これらの故障は高コストになります。ESDは産業にとって重大な問題で、年間数十億ドルの損害を引き起こしていると推定されます。フィールドで発生するESD事象は、個々の部品の故障を発生させ、場合によっては重大なシステム障害を引き起こします。

 

外付けESDダイオードやその他のディスクリート部品を使用して、データラインを保護することができます。多くのICデバイスはある程度のESD保護を内蔵しているため、IC自体用にはそれ以上の 外付け保護を必要としません。図5は、一般的な内蔵保護方式の簡略ファンクションダイアグラムを示します。信号入出力(I/O)の電圧スパイクはVCCまたはGNDにクランプされ、内部回路を保護します。多くのインタフェース製品やアナログスイッチは、IEC 61000-4-2規格に準拠するように設計されたESD保護を内蔵しています。

 

mx20170509_06

図5. 内蔵ESD保護回路の簡略図

 

マキシム・インテグレーテッドは、多大な労力を投入して堅牢なESD保護を内蔵したICを開発してきました。RS-232およびRS-485インタフェースICからスタートして、マキシムはインタフェーストランシーバ用ESD保護のリーダーになりました。これらのデバイスは、入出力端子に直接印加されるIEC 61000-4-2およびJEDEC JS-001のESDイベントに耐えることができます。この方式は堅牢で、すぐに利用可能で、外付け部品用の面積が不要で、ほとんどの代替方式より低コストです。

 

すべてのマキシム製デバイスは、取扱い中や組立て中に発生する静電気放電に対する保護のために、すべての端子にESD保護構造が組み込まれています。
MAX3483AE/MAX3485AEファミリなどの高ESD保護内蔵トランシーバは、トランスミッタ出力およびレシーバ入力端子に±20kVのESD保護を備えています。これらのトランシーバは、定格値以下のESDストライクによって損傷しないのみでなく、電源サイクルの必要なしに正常に動作を継続します。さらに、パワーアップ時、パワーダウン時、およびシャットダウンモード時にもESDストライクに対して保護されます。

 

フォルト保護
産業用ネットワークアプリケーションのRS-485デバイスのドライバ出力/レシーバ入力は、浮遊電圧スパイクに起因する電圧フォルトにしばしば晒されます。フォルトは、ESD事象とは異なります。

 

ESD事象は100ns以下の短い時間範囲内で発生するのに対し、フォルトは一般に約200μsまたはそれ以上の持続時間にわたって発生します。過電圧などのフォルトは、配線の誤り、接続の緩み、ケーブルの潰れや傷み、あるいはPCB上またはコネクタ内のはんだのかすが原因で電源ラインがデータ接続と接触することによって発生し、数秒あるいは数分間にわたって高電圧に晒されたあと、故障が発生します。多くの産業用電源は+24V以上あるため、これは大きな事故につながる可能性があります。データラインとの接触が発生すると、標準的な、保護なしのRS-485トランシーバは確実に破壊されます。

 

これらのフォルトに対する保護のために、通常のRS-485デバイスは高コストのディスクリート外付け保護回路またはデバイスを必要とします。フォルト保護を備えたRS-485トランシーバは、通信バスライン上で±40V、±60V、あるいは±80Vもの過電圧保護を提供します。

 

マキシムは、MAX13442E~MAX13444Eなど、データ端子の高DC電圧に耐えることができる多数のフォルト保護RS-485/RS-422トランシーバを提供しています。システムの複雑さと外付け保護の必要性を低減するために、これらのフォルト保護内蔵デバイスのドライバ出力とレシーバ入力は、グランドに対し最大±80Vの電圧フォルトに損傷なしで耐えることができます。デバイスがアクティブ、シャットダウン、または電源が供給されていない状態でも関係なく保護が保証されます。これによって、これらのデバイスは業界最堅牢のトランシーバになっており、そのため、産業アプリケーションに最適です。これらのデバイスは、電源への直接短絡、誤配線フォルト、コネクタ故障、ケーブル圧壊、および工具の適用ミスなどの過電圧フォルトに耐えるように設計されています。

 

真のフェイルセーフレシーバ
多くのRS-485トランシーバが備える重要な機能の1つが真のフェイルセーフ回路で、レシーバ入力がオープンまたは短絡状態の場合、または終端処理されたバス上のすべてのトランスミッタがディセーブルされた状態(ハイインピーダンス)の場合に、レシーバ出力がロジックハイになることを保証します。真のフェイルセーフは、レシーバ入力スレッショルドを-50mVおよび-200mVのわずかな負の差動電圧に変化させることによってバスエラーの問題を解決しました。

 

このロジックハイの保証は、レシーバスレッショルドを-50mV?-200mVの範囲に設定することによって実現されます。差動レシーバ入力電圧(VA – VB)が-50mVまたはそれ以上の場合、ROはロジックハイです。(VA – VB)が-200mVまたはそれ以下の場合、ROはロジックローです。終端処理されたバスですべてのトランスミッタがディセーブルされている場合、レシーバの差動入力電圧は終端によってグランドにプルダウンされます。

 

その結果、50mV (min)のノイズマージンを備えたロジックハイが実現します。従来のフェイルセーフデバイスとは異なり、-50mV?-200mVのスレッショルドはEIA/TIA-485規格の±200mVに適合しています。

 

ホットスワップ機能
ホットスワップ回路は、回路の初期化時や通電中されているバックプレーンへの接続時に発生するデータケーブル上の不要な遷移を除去します。短絡電流制限およびサーマルシャットダウン回路は過度の消費電力からドライバを保護します。

 

活線状態の(または給電されている)バックプレーンに回路基板を挿入すると、DE、DE/RE、RE、およびレシーバ入力AとBに電圧過渡が発生し、データエラーにつながる可能性があります。たとえば、最初の回路基板の挿入時に、プロセッサはパワーアップシーケンスを実行します。この期間に、出力ドライバがハイインピーダンス状態になると、トランシーバのイネーブル入力を定義されたロジックレベルに駆動することができません。

 

それと同時に、ハイインピーダンス出力からの最大10μAのリーク電流、またはVCCまたはGNDからの容量性結合ノイズによって、入力が不正なロジック状態にドリフトする可能性があります。

このような状態の発生を防止するために、MAX3440E?MAX3443EなどのデバイスはDE、DE/RE、およびREにホットスワップ入力回路を備え、ホットスワップ状態での不要なドライバのアクティブ化を防いでいます。VCCが上昇するとき、内部プルダウン(またはREの場合はプルアップ)回路が少なくとも10μsの間、かつDEへの電流が200μAを超えるまで、DEをローに維持します。最初のパワーアップシーケンス後は、プルダウン回路が透過的になり、ホットスワップ対応入力がリセットされます。

 

mx20170509_07

図6. ドライバイネーブル端子(DE)の簡略構造

 

この内部ホットスワップ回路は、どのように動作するのでしょうか?ドライバイネーブル入力(DE)には、M1とM2の2つのnMOSデバイスがあります(図6)。

 

VCCがゼロから立ち上がるとき、内部15μsタイマーが M2をオンにし、SRラッチをセットして、それがM1もオンにします。トランジスターM2 (2mA電流シンク)およびM1 (100μA電流シンク)が、5.6kΩの抵抗を介してDEをGNDにプルダウンします。M2は、DEをハイに駆動する可能性がある最大100pFの外部寄生容量に対抗して、DEをディセーブル状態にプルダウンします。15μs後、タイマーによってM2はオフになりますが、M1はオンのままで、DEをハイに駆動する可能性があるスリーステートリーク電流に対抗してDEをローに維持します。M1は、外部電流ソースが必要な入力電流を超えるまでオンのままです。その時点で、SRラッチがM1をリセットし、オフになります。M1がオフになると、DEは標準のハイインピーダンスCMOS入力に戻ります。VCCが1Vを下回るたびに、入力がリセットされます。REの相補型回路は、2つのpMOSデバイスを使用してREをVCCにプルアップします。

 

 

結論

 

ファクトリーオートメーションなどの産業システムアプリケーションは、過酷な電気的環境に晒されます。システムレベルの設計者にとって、これらの条件に耐えることができるハードウェアを開発する際に、いくつかの発生源からの電圧過渡を考慮に入れることが非常に重要です。ほとんどのデータ通信ネットワークは、RS-485プロトコル規格の堅牢性とともに、トランシーバICに組み込まれた特別な安全性機能によって、これらの影響に耐えています。拡張ESD保護、高電圧フォルト保護、ホットスワップ機能などの構造は、これらが発生した場合の保護を提供し、システムの信頼性維持に役立ちます。

 

[1] [2]

mx20170509_08

・本チュートリアルは、こちらよりPDFファイルがダウンロードできます。

http://ic.maximintegrated.com/Maxim_Interface_Tutorial_Form_JP


・参考文献
1. アプリケーションノート4491 「稲妻または静電気スパークによる損傷?それは身長で決まります!
2. アプリケーションノート5260 「過酷な産業環境のための設計について
3. アプリケーションノート639 「ESD保護をリードするマキシム

 

 

・問い合わせ先

マキシム・ジャパン株式会社

http://www.maximintegrated.com/jp/

プレスリリース ヘッドライン

» アーカイブ一覧

相互リンクを大募集中

E.I.Sでは、組込み技術・エレクトロニクス分野に関連するサイト・ブログとの相互リンクを大募集中です。個人で運用されているブログも大歓迎いたします。

相互リンク募集ページ

運 営

株式会社ピーアンドピービューロゥ

〒102-0092
東京都千代田区隼町3-19 清水ビル6F
TEL.03-3261-8981 FAX.03-3261-8983