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VolkswagenグループのCARIADとSTがソフトウェア定義型自動車向けチップを共同開発

2022.8.8  3:58 pm

VolkswagenグループのCARIADとSTがソフトウェア定義型自動車向けチップを共同開発

Volkswagenグループのソフトウェア開発企業であるCARIADと、多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクスは、ソフトウェア定義型自動車における新たな協力モデルとして、車載用システム・オン・チップ(SoC)の共同開発を近く開始することを発表しました。
      
CARIADとSTは、セキュアかつ将来性のあるソフトウェア定義型自動車の実現に向けて、通信、エネルギー・マネージメント、およびOTA(Over-The-Air)ファームウェア更新向けのハードウェアを共同開発します。
今回の協力は、統一性と拡張性を備えたソフトウェア・プラットフォームをベースとするVolkswagenグループの次世代自動車を対象としたものです。また、世界をリードする半導体専業ファンドリであるTSMC社がSTのSoC向けにウェハを生産することについて、合意する方向で進んでいます。これは、CARIADがVolkswagenグループの自動車用チップ供給を今後数年間にわたり確保することを狙いとしたものです。
      
CARIADは、半導体戦略の一環として、Volkswagenグループでは初めてTier 2およびTier 3の半導体サプライヤと直接的な協力関係を構築します。同社は今後、Tier 1サプライヤに対し、CARIADのゾーン・アーキテクチャにはSTと共同開発するSoCおよび標準の「Stellar」マイクロコントローラ(マイコン)のみを使用させる方針です。
       
Volkswagenグループの購買担当取締役であるMurat Akselは、次のようにコメントしています。
「私たちは、Volkswagenグループにとって画期的な新しい協力モデルを立ち上げようとしています。STおよびTSMC社との直接的な協力関係により、我々の半導体サプライ・チェーン全体を積極的に形作っていきます。私たちの自動車に必要な半導体が確実に生産され、きわめて重要なSoCやマイコンの供給を長期にわたり確保できるよう取り組んでいます。これにより、サプライチェーン・マネージメントにおいて革新的な戦略を実現します。」
        
今回、CARIADとSTは初めて共同開発を行います。CARIADの最高経営責任者(CEO)であるDirk Hilgenbergは、次のようにコメントしています。
「今後、STとSoCを共同開発することで、当社は一貫して半導体戦略を追及していきます。STと共同開発するSoCは、一切の妥協を排して当社のソフトウェアに最適化されるため、Volkswagenグループのお客様に最高性能の自動車を提供できます。最適化された単一のアーキテクチャをVolkswagenのすべてのECUに使用することで、当社のソフトウェア・プラットフォームの開発効率が飛躍的に向上します。これにより、マイコンやSoCを含むあらゆる電子制御ユニット(ECU)を、将来的に共通のベーシック・ソフトウェア上で動作させることが可能になります。」
       
新しいSoCは、STの高性能車載用マイコン「Stellar」ファミリの補完を目的としており、Stellarの電力効率に優れたリアルタイム性能をサービス指向の環境に拡張します。CARIADは、Volkswagenグループの自動車に対するターゲット要件と機能の提供に加え、Stellarマイコンのアーキテクチャの拡充にも貢献します。
     
STのオートモーティブ & ディスクリート グループ 社長であるMarco Montiは、次のようにコメントしています。
「STは、ソフトウェア定義型自動車への移行促進に向けてStellarを開発しました。CARIADがVolkswagenグループの次世代自動車に求められる要件と機能を満足するためにSTとの協力を決めたことは、STの取組みが成功したことを示しています。CARIADのソフトウェア技術と、STが持つ設計の専門性およびStellarの革新的な車載用アーキテクチャを組み合わせることで、Volkswagenグループは、ネットワーク接続されたクラス最高のソフトウェア定義型自動車を提供できるようになります」。
CARIADとSTは、協力の主要項目に関して合意しました。現在両社は、詳細の合意内容の決定に向けて、協力内容の詳細について最終的な協議を進めています。
             
CARIADは、Stellarマイコンをベースに共同開発するSoCと標準のStellarマイコンの両方を、同社の新しい「AU1」プロセッサ・ファミリに採用します。これにより、CARIADはさまざまな車載アプリケーションに柔軟に対応し、Volkswagenグループの全ブランドの要件に対応します。また、これらのチップは、VWのオペレーティング・システム「VW.OS」のゾーン・コントローラやサーバで動作するあらゆるアプリケーション(ネットワーク、ドライブ・トレイン、エネルギー・マネージメント、快適化システムなど)向けに設計されます。
Stellarの独自機能をベースにしたAU1プロセッサ・ファミリは、将来の機能拡張を簡単に行うことができるOTAファームウェア更新に対応した強力な製品となる予定です。共通のデバイス・アーキテクチャを使用することで、CARIADのエンジニアは1つのベーシック・ソフトウェアを開発するだけですべてのECUに対応でき、複雑な作業を大幅に削減できるため、開発期間の短縮が可能です。
また、Stellarアーキテクチャにより、多数の機能を個々のECUに搭載できるようになります。これにより、自動車のECUの数が大幅に削減され、コスト効率と信頼性の向上に貢献します。
       
CARIADは、STとの協力を通じて半導体の専門性を拡げ、共同開発により経験をさらに蓄積することができます。CARIADの最高技術責任者(CTO)であるLynn Longoは次のようにコメントしています。
「今回の協力は、最初の一歩にすぎません。将来的には、複雑な機能に向けた高性能半導体の共同開発も目指しています。」
      
CARIAD SEについて
CARIADは、Volkswagenグループの車載用ソフトウェア開発企業として、グループのソフトウェア技術を統合し、拡張しています。より安全かつ快適で、持続可能な自動車体験を提供するというミッションのもと、自動車産業向けの最先端技術を開発しています。2020年にCar.Software Organizationという名称で設立されたCARIADは、現在約5,000名のエンジニアと開発者を有し、Volkswagenグループの全ブランドで統一されたソフトウェア・プラットフォームの開発に取り組んでいます。この新しいソフトウェア・プラットフォームは、オペレーティング・システム、統一されたアーキテクチャ、および自動車用クラウドで構成されており、2020年代の半ばまでに最初の製品に搭載される予定です。また、自動車のデジタル化機能(運転支援システム、インフォテインメントの標準プラットフォーム、
パワートレイン・シャーシ・充電技術を連結するソフトウェア機能、新しいデジタル・エコシステムやデジタル・サービスなど)も開発しています。
CARIADは、ヴォルフスブルク、インゴルシュタット、シュトゥットガルト、ベルリン、ミュンヘンなどの都市にソフトウェア・コンピテンス・センターを有しており、米国と中国におけるVolkswagenグループの開発チームとも緊密に連携しています。
https://cariad.technology
       
STマイクロエレクトロニクス
https://www.st.com