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GaN半導体で電力密度を再検討

2017.4.14  12:33 pm

ローレンス・バークレイ国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)が2016年に発表したレポートによると、全米中のデータセンタは2014年に700億kWhものエネルギーを消費していました。驚くことではありませんが、この産業は電力効率と密度を上げる方法を絶えず探しています。電力効率を上げることは、電気料金と冷却のような運用コストの両方の節約になります。運用するユーザにとっても高効率化は、ラック密度を高め、コンピュータを設置するスペースを広げ、コスト効率向上の要求にも合致します。

窒化ガリウム(GaN)のようなワイドバンド・ギャップ・デバイスの登場は、これまでのシリコンのMOSFET(金属-酸化膜-半導体構造の電界効果トランジスタ)ではできなかった新世代の電力変換設計が可能になります。これらのワイドバンド・ギャップ・デバイスで設計するとシステムは、より高い水準の電力密度と電力効率を達成できます。GaNベースのソリューションを、データセンタ中の電源、すなわち交流電源からデバイス個々のPOL(ポイント・オブ・ロード)に渡って組み込むことができます。また、GaNは、超高電圧の直流送電のようなアーキテクチャも可能にします。図1に、現在の電源システムの主な回路ブロック図を示します。

図1

電力設備には、送電網の効率を最適化するための力率改善回路(PFC)が必要です。PFCは昇圧コンバータとして動作し、典型的には380Vの直流電圧を出力します。この電圧は、システムのDCバス電源を提供するためにさらに下げる必要があります。この段階では、さまざまなトポロジ(回路構成)が使われますが、LLC(インダクタ-インダクタ-コンデンサ)と位相シフト型のフルブリッジが12Vあるいは48Vのバス電圧を発生するのに一般的に使われます。このバス電圧は、システム内部までも組まれており、多数の変換ステップを通り、プロセッサやFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、メモリ、ストレージのようないろいろなデバイスにPOL電源を供給します。

GaNベースのソリューションは、図2に示すように、AC電源からプロセッサ電源に至るまでの全電源システムのアーキテクチャと密度を根本的に変えてしまいます。内訳を見てみましょう。

・PFC:トーテム・ポール構成をとることによって、TIの 『LMG3410』 のようなGaNデバイスは、アクティブ電力スイッチとフィルタ用コイルの数を半減させます。スイッチング周波数(連続的な導通モード{CCM}あるいはクリティカル導通モード{CRM}の動作で)を4~10倍に上げると、全体の効率を99%以上まで改善しながら磁性部品のサイズをより小型化できます。なお、今日のチタン系部品を使う電源の場合は96%の効率です。インターリーブ方式のソリューションを使用すると、システム要求を満たすために電力段をさらに拡大できるようになります。

・LLC:DC-DC段ではGaNの方が共振周波数を1MHz以上に上げることができるため、優れたスイッチング特性を持つというメリットがあります。この高周波化は、電力密度と効率を改善しながら磁性部品を減らすことができます。小さな形状であれば、380Vから48Vへ落とすコンバータ用のデータセンタにおける高電圧配電システムが可能になります。

・POL DC-DC:GaNはこれらのコンバータに大きな影響を及ぼします。まず、プロセッサやメモリなどの負荷に電力を供給するため、48Vから一気に使用電圧まで変換します。これにより、貴重なPCB(プリント回路基板)上の部品点数を半分に減らし、基板面積を75%も削減します。二つ目は、 『LMG5200』を使ってハーフブリッジの電流を2倍にする回路構成ができるので、システム設計者はいろいろな負荷の要求に対して電力段を簡単に重ねることができ、最高の過渡性能を得るため負荷に接近して配置できるようになります。

図2

GaNを将来的な技術として捉える時代はもう終わりました。GaNはいまや入手可能になり、設計者はこれまではできなかったものを実現できるようになります。非常に小型で、スイッチング速度が速く、かつてないほど“クール”な新しい電源システムを設計できるようになります。

<参考情報>
・信頼性、統合性、使いやすさに優れた TI の GaN ソリューション
・ホワイトペーパー「Optimizing GaN performance with an integrated driver」(英語)
・ブログ記事「Let’s GaN together, reliably」(英語)

※その他すべての商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年3月25日)より翻訳転載されました。

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