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横田英史の読書コーナー

私戦 本田靖春全作品集

本田靖春、講談社

2025.6.25  8:06 am

 評者が子供の頃に起こった「金嬉老事件」を題材にしたノンフィクション。読売新聞のエース記者だったジャーナリスト 本田靖春の代表作の一つである。綿密な取材で知られる本田だが、その特徴が遺憾なく発揮されている。金嬉老と彼を取り巻く関係者の人間模様、人質の行動など事件現場の様子を詳細に書き込む。迫力満点なノンフィクションに仕上がっている。迫真の現場描写は、他のノンフィクション作家とは一線を画す。一種独特な本田靖春の世界を味わっていただきたい。
      
 金嬉老事件は1968年に起こった殺人・籠城事件である。金銭トラブルが原因で2人の暴力団員をライフルで射殺した金嬉老が、静岡県寸又峡の「ふじみや旅館」に13人の人質を盾に立てこもった。犯人である金嬉老自身がメディアに登場し、リアルタイムで経緯が報道された。日本初の「劇場型犯罪」とも言われている。ちなみに本書は絶版だが、電子書籍で読むことができる。

書籍情報

私戦 本田靖春全作品集

本田靖春、講談社、p.254、¥550

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。