横田英史の読書コーナー
日本終戦史1944-1945〜和平工作から昭和天皇の「聖断」まで〜
波多野澄雄、中公新書
2025.9.5 6:56 am
なぜ日本は第2次世界大戦を早期に終結できなかったのかを史料をもとに分析した書。昭和天皇や近衛文麿、木戸幸一、鈴木貫太郎などの発言や行動を追うことで終戦に至るまでの動きを明らかにする。太平洋における日米戦争と大陸における日中戦争という複雑に絡まる2大戦争を、どのような展望のもとに、どのように終わらせようとしたのかを詳細に辿る。最後の最後までソ連の仲介に期待する甘さが、米英との和平を妨げ、戦勝終結を遅らせる要因となったことを詳らかにする。
日米戦争と日中戦争が絡んだ複合戦争が、対米戦争に終結に絞られたことが早期の終戦が可能となり、戦後の日米同盟につながったと見る。ちなみに終戦を決定するまで、日本の指導者たちは「即時和平」「一撃和平」「徹底抗戦」を俎上に上げ議論を交わした。一撃和平は沖縄あるいは本土で打撃を与えて、和平交渉に臨む戦略で、陸海軍や政府、皇族からの支持を得た。天皇の当初の立場も一撃和平だったが、沖縄での一撃ができず方針を変更したという。これが終戦への“聖断”につながった。
筆者は、未曾有の対外危機の状況にあっても国内政治や組織の利益を優先させる指導者の姿や、世界で生き残るための研究不足を指摘する。現在に通じる日本の甘さを厳しく断じる。
書籍情報
日本終戦史1944-1945〜和平工作から昭和天皇の「聖断」まで〜
波多野澄雄、中公新書、p.336、¥1210

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
新着記事
-

実践 フィジカルAIの教科書〜現実世界へ歩み出すAIの技術と活用事例〜
2026.9.8 10:38 am
-

パレスチナ実験場〜世界に輸出されるイスラエルの占領技術〜
2026.8.31 10:36 am
-

おどろきの刑事司法〜“犯罪者”の作り方〜
2026.8.25 10:35 am
-

曖昧な弱者の時代
2026.8.21 10:33 am
-

懐疑論〜古代ギリシアからデカルト、陰謀論まで〜
2026.8.13 10:32 am
-

最適化幻想〜効率が人を幸せにしない理由〜
2026.8.8 10:31 am
-

ヒトとAI
2026.7.31 10:29 am
-

日本史の宝箱〜史料をめぐる52の秘話〜
2026.7.25 10:27 am
SOLUTION
REPORT
横田英史の 読書コーナー
お薦めセミナー・イベント情報
ET/IoT Technology Show
Back Number
Pick Up Site
運営

株式会社ピーアンドピービューロゥ
〒102-0074
東京都千代田区九段南4-7-22
メゾン・ド・シャルー3F
TEL. 03-3261-8981
FAX. 03-3261-8983














