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横田英史の読書コーナー

介護格差

結城康博、岩波新書

2024.9.20  11:43 am

 ケアマネジャーなどの介護職を経験した大学教授が、日本における介護の現状(惨状)を詳説した書。介護保険制度の実態と課題についても言及し、抜本的な政策転換が必要だと訴える。介護サービスを利用したくとも利用しづらくなっている現状、歳をとったらお金次第、「勝ち組」「負け組」の介護格差など、身も蓋もない話を含め介護福祉の現状をよく伝えている。
     
 筆者は、金銭など経済麺、医療・健康、情報収集力、地域、親類・縁者など頼れる人の存在、ヤングケアラーの問題、世代間での意識格差など多角的に介護の現状を紹介する。筆者が進めるのは「介活」である。各自が介護活動に励み、介護の意識を高めることが欠かせないとする。
      
 筆者がまず取り上げるのが、お金の問題である。老後不安、介護費用や介護期間、介護保険料の仕組み、老後資金2000万円不足問題、老齢基礎年金(国民年金)の現状などを解説する。その後、「頼れる人がいるか否かで明暗が分かれる」「医療と健康格差」介護人材不足と地域間格差」「介護は情報戦!」「団塊ジュニア世代の介護危機」「厳しい2024年改正介護保険」「格差是正のための処方箋」などと議論を進める。誰にでも訪れる介護の問題について、正しく対応するための情報が詰まった1冊である。

書籍情報

介護格差

結城康博、岩波新書、p.272、¥1100

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。