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横田英史の読書コーナー

老化と寿命の謎

飯島裕一、講談社現代新書

2024.8.25  11:36 am

 老化や寿命に関する最新の研究や知見、健康な老後を過ごすためのヒントなどを紹介した書。信濃毎日新聞は医療関連のルポルタージュの質の高さでつとに有名である。本書は「老化と寿命の謎を探る」と題した39回の連載記事を新書化したもので、期待を裏切らない出来である。基礎老化学を取り上げる第2章は技術的に深い内容のため少々難解だが、読み飛ばしても大きな問題とはならない。
       
 内容は多岐にわたる。例えば冒頭では、400年生きるサメ、若返るクラゲ、再生するプラナリアといったキャッチーな話題で読者を引きつける。その後は、寿命に関わる遺伝子の発見、老化を引き起こす活性酸素、臓器の機能不全など全身に悪影響を及ぼす慢性炎症、心身が衰えるフレイル予防のポイント、細胞の新陳代謝を担うオートファジーといった興味深い話題を繰り出し、最後まで飽きさせない。評者のような高齢者だけではなく、多くの方にお薦めできる啓蒙書である。

書籍情報

老化と寿命の謎

飯島裕一、講談社現代新書、p.240、¥1034

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。