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横田英史の読書コーナー

謎の平安前期〜桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年〜

榎村寛之、中公新書

2024.2.9  9:26 am

 400年近く続いた平安時代だが、その脚光を浴びてこなかった最初の100年(前期)の実像に迫った新書。平安時代と言うと優美だが“なよっ”とした貴族をイメージする。あるいは、NHK大河ドラマの影響で源氏物語、藤原道長、紫式部、清少納言が思い浮かぶかもしれない。十二単や陰陽師(安倍晴明)も平安時代のイメージである。しかし、こうしたイメージは平安時代の後半しか言い表していないという。本書は、転換期で激動の時代だった平安時代前期に焦点を当て、天皇を巡る権謀術数、藤原摂関家の成立、天皇や皇后、貴族、官僚、女官、斎宮などの人間模様を詳述する。
       
 興味深いのは、平安後期が実力本位の時代だったこと。女性も男性も能力があればのし上がれた。例えば、デキル女性が競い、その勝者が天皇側近としての地位をつかみ立身出世することが少なくなかった。家柄が物を言う平安時代中期以降とは大きく異なる。和歌の復権が、源氏物語や枕草子などの女流文学が花開くキッカケとなったというのも面白い。藤原摂関家(藤原道隆、道長、頼通)が、その娘である皇后を媒介に、天皇と数少ない皇子女を囲い込む摂関政治誕生までの流れもよく分かる。
       
 本書には非常に多くの人物が登場し、とても覚えきれない。複雑に絡まった天皇と関係する系譜には閉口するが、適当に読み飛ばしてもさほど不自由はない。源氏物語が誕生した時代背景を知ることができ、「光る君へ」の副読本として読んで損はない。

書籍情報

謎の平安前期〜桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年〜

榎村寛之、中公新書、p.304、¥1100

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。