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横田英史の読書コーナー

東大教授が語り合う10の未来予測

瀧口友里奈・編集、暦本純一、合田圭介、松尾豊、江崎浩、黒田忠広、川原圭博、中須賀真一、戸谷友則、新藏礼子、富田泰輔、加藤真平、大和書房

2023.12.6  12:32 am

 異なる専門分野11人の東大教授が、10ジャンルについて語り合った書。10のジャンルとは、エネルギー、教育、宇宙、IT、仮想空間、AI、国家、生命、ビジネス、環境である。盛り上がりに欠けるテーマもあるが、普通なら質問される側の東大教授が、専門外のテーマについて素朴な疑問を投げかけるところは面白い。ネットワークの研究者である江崎浩教授が「違う分野の研究者が集まって話すと、やはり新しい発見があるんですね。我々はもう少し集まって話をしなければいけない」と語っているが、本書には異分野格闘戦の効果が出ている。
     
 4つのパートで構成し、それぞれ3人の研究者が対談する。イーロン・マスク評、GAFA評、日本のビジネスの問題点、半導体の民主化、宇宙開発の民主化、宇宙エレベーター、正体不明の物質ダークマター、メタバース、6G/7G/8G通信、認知症、パーキンソン病、記憶の仕組みなど、話題は多岐にわたる。素人感覚の質問に、その分野を専門とする研究者が噛み砕いて回答しており勉強になる。
     
 4つのパートのなかで最も興味深かったのは、暦本純一、合田圭介、松尾豊の対談である。人間に能力をダウンロードする時代になる、1000歳まで生きる人間を作ることは可能か、イーロン・マスクの「ヤバさ」とは、研究者はSFがお好き、ブレストはもう古い、「雑談」こそがクリエイティブである、「兵士」は多いが「司令官」が足りない日本、など話題は多岐にわたり楽しめる。

書籍情報

東大教授が語り合う10の未来予測

瀧口友里奈・編集、暦本純一、合田圭介、松尾豊、江崎浩、黒田忠広、川原圭博、中須賀真一、戸谷友則、新藏礼子、富田泰輔、加藤真平、大和書房、p.264、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。