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横田英史の読書コーナー

[増補改訂]GPUを支える技術〜超並列ハードウェアの快進撃〜

Hisa Ando、技術評論社

2022.10.5  9:02 am

 GPUのハードウエア、ソフトウエア、アプリケーションについて解説した技術書の増補版。メモリーやバスインタフェースなどの周辺技術もカバーしており役立ち感がある。筆者は3次元グラフィックス、AI、ゲーム、AR/VR、シミュレーションなど、具体的なアプリケーションとGPUの内部構造を関連付けなから解説を進める。カラーの図や写真を効果的に使っており理解が進む。
     
 筆者は、コンピュータシステムと画像表示、グラフィックスの歴史、MPUとGPUの違いから解説を始め、MIMDやSIMD、SIMTといった並列処理の変遷、NVIDAIやAMD、ARM、IntelなどのGPUの内部構造の比較、エラーの検出と訂正(ECC)、MPUとGPU間のデータ伝送技術、プログラミング、AIアクセラレータ、ベンチマークテストにまで話を進める。
     
 MPUとGPU間のデータ伝送技術では、PCI ExpressやNVIDIAのNVLinkとNVSwitch、IBMのCAPIを取り上げる。プログラミングでは、NVIDAIのCUDA、業界標準のOpenCLなどについて概説する。AIアクセラレータについてはGoogleのTPU、NVIDIAのTensorコア、LeapMindのEfficiera、ARMのMLプロセッサに焦点を当てる。この分野にすっかり疎くなった評者にとって、NVIDIAやIntel、AMDの新世代GPUの解説は興味深い内容だった。
     
 本書は技術評論社らしい技術書である。ある程度の知識を前提にしているが、AIやメタバース(AR/VR)、スマホなど活用範囲が拡大するGPUの技術を知りたい向きにお薦めの1冊だ。

書籍情報

[増補改訂]GPUを支える技術〜超並列ハードウェアの快進撃〜

Hisa Ando、技術評論社、p.400、¥3608

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。